03.最高裁の上告不受理決定に物申す。 ■
2002.7.25/弁護士 澤田有紀
和泉市内で事業を営んでいたX老人は、会社設立時から1人会社の名義株主として長男夫婦を含め親族を名義株主としていたところ、長男夫婦に会社を乗っ取られたので、その株主権がXに帰属するとの確認請求をしていた。この事件の上告事件で最高裁判所第二小法廷から、上告不受理という決定が送達されて驚いた。
私が驚いたのは不受理決定そのものではない。問題は納得のいくような決定理由が書かれていないことにある。
上告受理は、「最高裁の判例に相反するか、法令の解釈に関する重要な事項を含む事件」について申立ができるが、受理するか否かは最高裁の裁量に委ねられている(民事訴訟法318条)。
私が驚いたのは迅速になされた裁判自体ではない。裁量で不受理とするに至った理由が全く明らかにされていないことである。もとより事案によっては紋切り型の門前払いの決定で十分な場合もあることを認めないわけではない。
本件受理申立理由は、原審大阪高裁の民事訴訟法上の訴変更に関する最高裁の判例と相反する判断ならびに法令の解釈に関する重要な事項を含む事件であることを詳細に指摘していたのである。裁量で不受理とするとしても、最高裁として正面から受け止めて、何故そのような結論になるか説明して然るべきではないか。これを、記録到達後僅か一ヶ月という短期間で判断したのは、迅速な裁判の名のもとにおける暴挙であり、記録も読まないで結論を出したと評されても仕方あるまい。
そのような誤解を招かないようにするためには、この種、上告不受理決定事件でも、受理申立理由が詳細に述べられている以上、最高裁としては、三行半の決定(理由が全く書かれない決定)で済ますべきではない。簡単でもよいから、正面から応えてやるべきである。裁量だからと言って理由も書かないで、三行半の決定をするのは理由無きに等しいのである。最高裁が多忙であり負担軽減をしなければならないことは、十分承知したうえで、正しい民事訴訟制度を確立する道程において重要なことだと思った。
因みに、第二小法廷の本件裁判長は元検事長出身のK裁判官であり、元外交官出身のF裁判官が加わっている。民事訴訟法の難解な論調を理解して不受理とされたのかさえ疑問である。将来のために、最高裁としては、裁量による不受理の客観的基準確立のため、せめて受理申立理由全文を決定に添付されるべきことを提案する。
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(C)弁護士法人みお綜合法律事務所(大阪弁護士会所属 代表弁護士澤田有紀)