08.民事再生法を活用した病院経営の再建手続き ■■■
2002.7.25/弁護士 澤田有紀
[4] 再生計画立案
1 再生計画
(1) 民事再生の開始決定から、再生計画案提出まで、標準スケジュールでは約4ヶ月程度と定められている。この間に、別除権者との交渉により別除権の支払額を確定し、公租公課その他優先債権の弁済計画を立てて、再生債権の弁済計画を立案しなければならない。スケジュールとしては、全く余裕はないので、申立前から十分に方針を決めておかなければならない。
(2) スポンサーによる支援を受けず、収益により再生計画の弁済を図る場合、債権者の理解を得るためには、法(155条2項)で定められた最長の10 年間で弁済計画を立案することとなる。弁済率については、特に医療法人であるからといって、他の業種と変わることはないので、業績計画を慎重に策定して決定しなければならない。
(3) 医療法人の収入に直接影響を与える診療報酬制度が、政策により急速にしかも大きく変更されることから、10年という長期に亘る再生計画を策定し、弁済を確保することは容易ではない。
(4) また、民事再生に至る直前期には、資金繰りや資金調達のめどが立たずに、本来必要な設備投資が凍結されていることも予想されるので、再生計画を立てる際には、設備投資を十分に見込まなくてはならない。
2 債務免除益の問題
(1) 再生計画が認可されたとしても、権利変更条項により免除された金額がそのまま債務免除益として課税されるとなると、再生計画の立案そのものが不可能となる。債務免除益の処理の問題は、民事再生計画立案の際に最大のネックとなる。
(2) 債務免除益に対する対応としては、・債務免除益の発生時期を調整する方法と・損金によって債務免除益を圧縮する方法が考えられる。
(3) 債務免除益の発生時期を調整する方法としては、・再生計画による弁済を完了した時点で債務免除を受ける方法、・分割弁済の場合において弁済を行う都度一定割合の債務免除を受ける方法、・再生債務者の清算を前提として、清算結了時に債務免除を受ける方法がある。株式会社においては、新会社を設立して再生債務者の営業を全部譲渡して、新会社を存続させて再生債務者を清算するということで解決する方法もあるが、医療法人の場合には、容易に新しい医療法人を設立することができないので、債務免除益の問題は重大である。
(4) 損金によって債務免除益を圧縮する方法としては、・繰越欠損金を利用する方法(法人税法57条、同法59条、同法施行例117条、118 条)、・営業譲渡、不動産譲渡によって譲渡損を発生させる方法、・資産の評価替えによって評価損を発生させる方法がある。(以上、商事法務「再生計画事例集」15頁)。
(5) 債務免除益をどの方法によって解消するかについては、会計士も交えて十分に検討する必要がある。
3 再生計画案に対する決議の可決要件
再生計画案可決の要件は、議決権者の出席者の過半数であって、議決権者の議決権の総額の2 分の1以上の議決権を有する者の賛成が必要とされている(法171条)。棄権は反対と同視されるから、議決権者の頭数と金額の両方の過半数の賛成が必要となる。再生債権者に対する総弁済額は、清算価格を上回ることが必要条件である。
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(C)弁護士法人みお綜合法律事務所(大阪弁護士会所属 代表弁護士澤田有紀)